専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2008年8月号の表紙

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町づくりカフェ(2008年8月号掲載)


現在、キックバックカフェ(以下KBC)の隣は広い空き地になっている。
すでに丸二年も空き地のままだ。以前そこには、食品製造工業があった。
その工業が閉鎖された後に大型ホームセンターが入ることになった。しかしそれをきっかけに、KBCがテナントとして入っているマンションの理事会とホームセンター側との対立が始まった。

KBCの前の道はとても狭く、ただでさえ渋滞がひどい。そかしそのホームセンターができると、約700台分の無料パーキングができることになる。
それは更なる大渋滞引き起こすという意味だ。、
また、地上5階に誕生するパーキングからまき散らされる多量の排気ガスは、隣接するマンションの住環境に決定的な影響を与える。

仙川というアートと文化の香りがする街に高額なマンションを購入した人々は、静かで豊かな生活を求めてこの地を選んだ。
それなのに、真隣に地上五階建てでパーキング付きの巨大ホームセンターがやってきたらたまったものじゃない。だから、当然反対する。
しかし、向こうは商売だ。だから何が何でも強行したい。そこにある溝は埋まらない。
そんなわけで、住民とホームセンターとの激しい攻防が今も続いている。

実は、KBCがこのマンションの一区画に出店するテナント契約を結んだときも、理事会からの大反対にあった。我々が契約した区画は、商業区画で、隣にはファミレスもある。
しかし契約を締結した直後から、住民の代表である理事会からの大反対キャンペーンが始まった。
我々はライブカフェだが、騒音を懸念した住民代表から騒音対策への強い要望が出た。
外に音が漏れない防音工事をしないかぎり、営業を認めないとい厳しいものだった。

反対はそれでけではなく、僕が牧師であるという経歴にも向けられた。
日本人は、オウム事件のような半社会的なカルト騒動にうんざりしている。
彼らの中には何か異様な集団が入ってくるのではないかという漠然とした不安感があったのだろう。

僕は出来る限りの誠意を持って努力し、人々に安心してもらえるように、自分たちが怪しくないこと(笑)を説明し、防音工事にも同意し、当初の予算にはなかった「防音工事費用」を捻出した。
それだけで数千万円の余剰経費となった。それは想定外の大きな出費だった。
しかし、地域社会に貢献し、文化創造の役に立つことを願っている我々にとって、そでにそこに住まわれている 方々の不安を払拭するための努力は当然だった。
その甲斐あって理事会の方々にも理解していただき、KBCの出店が認められたのだった。

つい先日、ホームセンター建設反対の陣頭指揮をとっている理事会の方が、もう一人の男性を連れてランチをしに来てくれた。その男性はスタッフにこう言った。

「私は以前、KBCがここに来るのを最も強く反対した者です。
しかし今私たちは、石井さんのことを全面的に信頼しています。
石井さんは、私たちの声を聞き、防音工事もしれくれた。
KBCで音の問題などは全くありません。」

それをスタッフから聞いた僕は、言葉にならないほどの感動を覚えた。
かつての反対者が今は支援者になってくれている。

この街、この場所に本当の意味でKBCが受け入れられた瞬間だった。



先日カウンター越しにスタッフが話した女性がいる。
彼女は大好物の「アイスクリーム大盛り」をほおばりながら賃貸情報誌に見入っていた。

「引越し考えてるの?」

スタッフがそうたずねると、

「そうなんです。このあたりに。」

と言う。
弟が地元から出てくるので一緒に住もうかということになっているらしい。
スタッフは聞いた。

「どうしてこのあたりなの?」

すると彼女は言った。

「キックバックがあるから!」

KBCがあることが仙川を選ぶ理由。
考えてみればすごいことだ。
実はこういう人は少なくない。実際、僕たち夫婦が仙川に来ることを勧めた結果、調布市民になった人は50人を超えている。

新潟の病院に就職が内定していたのに、それをけって、近所の病院を面接したら見事合格し、新潟行きをキャンセルした看護師さんもいる。
独身者ばかりだけではない。KBCのすぐ近くに新居を購入した家族もいる。


街をつくるのは人だ。
街とは人そのものだ。
人のクオリティーが街のクオリティーを決める。
街づくりとは人づくりでもある。
街の質は、その地域社会にする人にかかっている。

そういう意味で言うと、多くの人が、KBCを目指して仙川住民になっているという事実は、
我々は非力ではあるが街のクオリティーに影響を与え、街づくりに貢献しているのだろうと信じる。

そういえば、キックバックが仙川に来てから、調布市の犯罪率が下がったという話を聞いたことがある。
もちろん、KBCとの因果関係は照明されない。
しかし、丁度KBCが調布市に来たころから犯罪率が下がった。きっとKBCに関わる人たちが街を変えているのだ。
そうであって欲しいし、そうであったらどんなに素晴らしいだろう。


数年前、ヤクザから足を洗った男性がKBCに出入りし、僕のもので人助けに貢献したいと通っていたことがある。

ある事件が起きて彼は調布警察に連行された。犯人と間違われたからだ。
取調室で彼は
「俺はヤクザじゃねえ。石井希尚という牧師の元で学んでいるクリスチャンだ!」
と叫んだが、その口調と風貌から誰も信じてくれなかった。
警察から僕にも出頭命令が来た。署に到着し、刑事課フロアのエレベーターを降りた僕を出迎えた刑事さんが、

「あなたが石井さん?どこの組?」

と鋭い目で僕をみた。

「こちらへ来て下さい」
と、取調室につれて行かれる僕を見て、フロアの端から声が聞こえた。

「あれ、石井希尚先生じゃないか?」

そのフロアの刑事さんが僕の本の読者だった。取り調べはサイン会に変わった。
刑事さんは言ってくれた。

「いや〜先生。これは失礼しました。
調布市では今や有名な方ですから、どうぞ安心してご活躍してください。」

後日、この刑事さんは豆乳ラーメンを食べにきてくれた。
支援者は警察にもいるんだな。
この体験は大きな励ましになった。

KBCはただのカフェだ。
しかし警察に後押しされながら(笑)街づくりに貢献している。
これからも仙川と言えばKBCと多くの人に思ってもらえるように努力していきたいと思っている。

(2008年8月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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