専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2008年7月号の表紙

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好意がカギだ(2008年7月号掲載)


先日、講演会のために訪れた地方のホテルで、夜遅くに部屋に戻り、
休もうと思って妻がベットカバーを外したところ、なんとシーツに体毛がたくさん付着していた。
しかも汗臭く、シーツを変えていないのが明らかだった。
すでに深夜1時過ぎ。
すぐにフロントに電話をして、シーツを枕を持ってきてもらい、自分たちで取り替えた。疲労していた妻は、いっそう疲労し、しかも眠気が飛んでしまって休まらなかった。
この地方では有名なホテルなのに。

ところが、翌朝のチェックアウト時に、ホテル側は、サービスで客に配っているコーヒー券二枚を手渡して、それで終わりにしようとした。
次の予定もあり先を急いでいたので、その場を去ったが、ホテルを手配した講演主催者が、それを知りクレームを出したところ、後から返金になったそうだ。
しかしコーヒー券だけで済まそうとしたのは
「あまりご立腹されていなかったご様子だったので」ということらしい。
その対応をしたのは、宿泊係りの主任だそうだ。
僕はこれを聞いて、二度とこのホテルには泊まらないと決めた。

この出来事は、同じサービス業をやる者としては教訓になった。
こうやって、人は離れていくのだ。
サービス業というのは人を相手に仕事をしている。

結局のところ、人々は、店の雰囲気や味もさることながら、そこで働くスタッフの対応の善し悪しで店をスタッフのことを判断する。
平たく言えば、そこで働くスタッフのことを好きになるか嫌いになるかで、再び戻ってくるか来ないかを決めてしまうのだ。

カフェもホテルも癒しとくつろぎを与えるはずの空間だけに、お客様の期待にそぐわない対応は命取りになる。
だからと言って人々に媚びる必要もない。
媚びることはないけれども、心を込めて、人々のニーズに目を留め、そのニーズに答えていく努力をするべきだ。

予期せぬ問題が発生することは避けられない。
しかし、何かがおこったときの対応能力こそが問われている。
問題が発生しても、正しく対応すれば人はそれを受け入れてくれ、かえってよき理解者になってくれる場合が多い。

我々も、クレームや問題にいかに対応するべきかを経験的に学習しているし、
それが報われたときは大きな喜びとなるものだ。

ある日のランチタイム、
「料理が遅かった。ドリンクも注文の時、伝えたのと違う!」
というクレームがあった。
そのお客様を担当したスタッフは「やってしまった」と思った。
彼女は「誠心誠意あやまろう」とお客様にお詫びをした。

ところが、立腹していたお客様は目も合わせず、
「もういいです」と彼女をシャットアウト。
それにもめげずに、彼女は、お客様がちょうど食べ終わった頃を見計らって、会話づくりのためにヴィーガン・マフィンの試食を勧め説明をしに行った。

「へー卵も使って無いの・・・?」
そんな努力の甲斐もあって、固かったお客様の表情が和らいでだんだん話しをしてくれるようになった。

「さっきのは怒ったんじゃないのよ・・
ただ子供がおなかすいてるとイライラするから・・・ね」そして言った。
「料理とてもおいしかったから、また来るから心配しないで」

8歳の男の子が一緒だった。その子はマフィンを食べて「これはいいよね、甘さもちょうどだし、柔らかいよ、ぼくはこの店気にいったよ!」と言ってくれた。
「この子生意気でごめんなさいね〜」苦笑いする母親。

自分の失敗で立腹されたお客様にはなるべく近づきたくないし、何となく避けたくなるのが心情だろうが、誠意を持って対応したことが好意につながり、好意が良い結果をうんだのだ。

オープンしてすぐの頃、家族でよく来店していた家族がいた。
もう3年以上も前のことだ。ところが、あるとても混ん土曜日の午後、ホールスタッフの手が回らず、様々なミスも重なって、そのお客様は、大変立腹してしまった。
「美味しいから来ていたけど、もう来ないわ」と不快感を露にした母親。
対応したのは、ドリンクのスタッフだった。
彼女もまだ未熟でただ謝るしかできなかった。
前途のスタッフのように(その後の対応)もできず、お客様を怒らせたまま帰らせてしまったのだ。

その時彼女が言えたのは「貴重なご意見をありがとうございます。これを必ず活かして今このような事が起きないよう、スタッフ一同精進して参りますので是非またいらしてください」だけだった。
帰り際の精一杯の誠意だった。

すると二ヶ月程前、見覚えのある家族が来店した。
もしや・・・と思い目を凝らすと、その家族だった。
彼女はホールの主任に以前のクレームの件を伝えた。その日、彼らはKBCでの時間をとても楽しとんで帰ったようだった。

ああよかった・・・ホッしていると、つい最近も再び家族で来店。
その日は、さらにリラックスしている様子で、オープンした当初に見られた(気に入ってくれていたときの)彼らに戻っていた。

「戻って来てくれた・・・」

悔しかった思いが報われた。彼女は言う。
「やはりクレームをくれるお客様というのは、期待が大きく店を良くしたいと思っているんだと改めて思いました」

確かにそうかもしれない。
しかし誠心誠意謝った素朴な彼女の姿がきっと、彼らの心に触れ、そこに好意が生まれたのだ。だからこそ戻ってきてくれた。





人々はスタッフを好きになるから来店してくれる。
まさにその典型的な看板娘がいる。
開店当初からのスタッフで「☆ちゃん」と呼ばれている。

彼女は毎日駅前や近所のスーパーの近くで大声でチラシを配っている。
彼女ほど多くの人から好かれているスタッフは他にいないだろう。
彼女と仲良しなのは、同世代の女性ばかりではない。 彼女のファンは幅広く、ご年配の方の中にも彼女目当てのお客様がたくさんいるのだ。
とくに(このおじいちゃん)は、なんと言っても「☆ちゃん」あってのお客様。

来店する時は、必ず「☆ちゃん」に店に何時に戻るか聞いてくるようだ。
いないと「一時に約束したのにまだ来ない!」とそわそわ。

ある日、ランチの時間に来店したが、トビラを開くと開口一番「何でチラシ配ってねーんだよ!閉まってると思うじゃねーかよー!」とちょっと寂しそう。
「やってるならやってるって言えよう! わかんねーじゃねーか! あの子はどこいった?」
☆ちゃんのことだ。

「今暫く京都のお店に行ってるんですよー」
2月末に京都に新店舗を出した関係で、京都のオープニヘルプに行ってもらっていた。そんなわけで、しばらく彼女は仙川の街から姿を消していたのだ。

「何だよ、さみしーじゃねーかー、話し相手がいねーよ」

そう言う彼をスタッフはカウンターにご案内した。
向かい会ってスタッフと話ができる場所だからだ。彼は以前注文して気に入ってくれたメニューを再度注文してくれ、「こんなおいしいの世界中回ったってねーよ!」と絶賛してくれている。

このおじいちゃん、☆ちゃんのことを好きになってくれなければ、きっとカフェに入るようなタイプの人じゃなかっただろう。

そんなおり、近所のスーパーの駐車場のお兄さんから、こんな話を聞いた。
そのスーパーの常連さんがこないだ京都に観光に行ったらしい。

「こないだ京都に旅行に行ったら、遠くでわかんないんだけど、
いつもここの前でちらし配ってたのよねー違うかもしれないけど、そっくりだったわ。」
といっていたそうだ。

「☆さん、もしかして京都にいってます?」

それを聞いたスタッフは大爆笑してしまった。

京都でも仙川でも、☆パワーは炸裂しているんだな〜。

(2008年7月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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