専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2008年4月号の表紙

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医療関係者の癒しカフェ(2008年4月号掲載)


最近ちょくちょく見かける女性客。
スタッフと仲良く話している。ディナータイム以外にも来店されていたので、近所に住んでいるのかなと想像していた。
彼女は、女性スタッフの一人と仲良くなり、そのスタッフを経由して、他の常連客とも仲良くなった。そして、気づいてみたら日曜夜のイベントで「医療関係者席」に同席していた。

別にそういう指定席があるわけじゃないが、キックバックカフェ(以下KBC)で知り合いになった医療携わる人たちが自然と仲良くなり、同じテーブルでイベントを楽しんでいる光景が最近目立つようになってきたのだ。
そこに彼女もいた。彼女も看護師だからだ。

つい先日、その彼女と個人的に話す機会があった。
「近所なんだよね?」

「はい、すぐそこですよ。そこの近くのコンビニの角を曲がって・・・」

「へえ、それは本当に近いね。そこが実家なの?」

「違うんです。友人に仙川って住むのにいいよって言われて引っ越してきたんです・・」

「そうなんだ。ほんと、このあたりは住むのにいいよね・・・」

「KBCを知るまでは、仙川の駅と家を行き来するだけだったんですけど、ここを知ってからは、本当にすごく嬉しくて・・・」

「いつもきてくれてどうも・・」

「・・・ここに来ると自分がここを求めているんだなあって実感するんです・・・この間も、少しダウンしていたんですけど、ここにきて、スタッフの方と話をしていたら、自分が上がってきたのが感じられたんですよね・・・だから、私にはすごく必要な場所で・・・」
 
彼女は本当にここを必要としてくれている。その言葉が嘘じゃないことは、来店する頻度が証明している。先日は一人でカウンター席に座り、女性スタッフと親しそうに話していた。

カウンター席は働くスタッフと対面する場所なので、常連さんでも、かなり親しくなっていなければなかなか座らない。まして女性が一人でカウンターに座っているのも見たら、間違いなくその人はただのお客様以上の存在になっている。

彼女と話していた女性スタッフは自分の仕事が終わると、今度は着替えて、客として彼女と共にカウンターに座った。顔見知りになってくると、スタッフも友達として接するようになる。スタッフの接し方が、そのお客様との親密度をはかるバロメーターだ。
 
人は心にいろいろな重荷を持つ。キックバックとはリラックスという意味だから、人々が重荷を下ろしに来てくれることを何よりも願っている。
だから、KBCを知ってからというもの、この場所が自分に必要なんだと実感しながら、そこにいることが「日常」になっていく人を見ることができるのは、この上もない喜びだ。KBCが存在している目的を果たせているんだなと確認できるからだ。



外勤の途中にランチに立ち寄ってくれるドクターがいる。彼女も医療関係者席でよく見かける一人だ。
外勤というのは、普段働いている病院以外に、別の病院で外来だけの勤務をしにいくことを言うのだそうだ。昨年の10月から外勤が変更になって、月曜日と木曜日の午前は、立川にある病院での外勤になった。

立川での外勤が終わると、なるべく早く板橋の病院に戻らなければならない。
時間的に言えば、立川でランチをして、そのままJRで板橋に戻った方がはるかに早いし面倒くさくない。
それでも彼女は、わざわざ京王線に乗り継いで、仙川まで来てくれる。
たった30分〜40分しかいられないのに、KBCでランチをとって、さっそうと板橋まで戻っていくのだ。本当にありがたいことだし、僕が言うのもなんだが「すごいなあ」と思う。
でも彼女は言う。
「そんなんじゃない。面倒くさいとか、時間がどうしたとかの問題じゃないの」
 
実は、立川の病院での外勤は大きなストレスだ。
一緒に働くのは男の先生ばかりで、女医嫌いの部長がいる。外来を手伝いに行ってるはずなのに、ありがとうは一度も言われたことがない。ちょっとしたことでも文句を言われる。いわれのない文句もある。

「私が行ってありがたくないんだったら行きたくないよなぁ…」

そんなことを思いながらも、ひたすら患者さんを診察する。
朝、「今日は何の文句を言われるんだろう…」と思いながら出勤する。そんな毎日だから、週に1回ならまだしも、2回も立川の病院に行くのは本当に気が進まない。嫌々だったが、それでも文句を言わずに引き受けた仕事。
けれども、引き受けた時は本当に落ち込んだ。

しかし数日後、彼女はふとこう思った。

「月曜日は定休だけど、木曜はキックバックがやってるじゃない!いつもは忙しくていけないキックバックに、昼間っから行けるなんて信じられない!やったぁ!!」

そう思ったとたん、あっという間に心が晴れ晴れとした。
久しぶりの昼のキックバックにランチに来た時、そこには子どもたちがたくさんいて、元気に走っている姿があった。そして、お母さんたちが嬉しそうにごはんを食べていた。張りつめた神経が一気に緩まるのを感じた。

「『お帰り』と笑顔で迎えてくれるスタッフがいるのが何より嬉しくて・・・」
そう。スタッフは家族同然となった人々にお帰りと声をかける。(2007年10月号「おかえりカフェ」参照)

「ここは別世界!!!仕事を引き受けて良かったんだぁ!!」

その後、上司に「イヤだったら外勤を変えようか?」と突然言われた。
しかし彼女は笑顔で言った。

「大丈夫です」


医師や看護師たちにも、癒しと安らぎが必要だ。
医療不信が叫ばれるようになった昨今だからこそ、現場で働く人々には、なるべく良好な精神状態で患者に向き合ってもらいたいと願うのは、僕だけじゃないだろう。
そんな折、医療に携わる人々が重荷を下ろし、再び患者さんと向き合うべく戦場に出向いていくための、ベースキャンプとしてKBCが少しでも機能しているなら、医療クオリティー向上の一躍を担う事ができているのかなと、密かに誇らしく感じている。


(2008年4月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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