専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2008年3月号の表紙

旭屋出版web site


安全カフェ(2008年3月号掲載)


食の安全が脅かされている。
毒入り餃子事件は、我々消費者が真剣に食について考えなければならないことを告げる警笛だ。こういう時代だからこそ、食を預かる立場の者は、安全を提供しなければならないし、そこに嘘があってはならないと思う。

企業は常に利益を追求しなければならないという宿命を負っている。
しかし、企業の利益は消費者の利益でなければならない。
今の時代、消費者にとっての利益の最重要事項は「安全」であろう。

キックバックカフェ(以下KBC)は、オープン以来、人々がリラックスできる空間を提供することをモットーに営業をして来た。
キックバックという店名にもその思いが込められている。キックバックとは、英語の俗語で「リラックスしよう」という意味なのだ。
だから、スタッフ一同、我々は常にKBCを訪れる人々が、この場所で重荷を下ろし、心からリラックスし、安心して頂けるように心がけて来た。

しかし、本当の安心は「安全である」という土台抜きには得られないものだ。
その面においても、我々は食の安全を確保するという意識を高くもって、クオリティーコントロールに努めて来たつもりではある。(2007年8月号「ヘルシーカフェ」参照)

しかしここに来て、更にその意識を高めていかなければならないと襟元を正されている。
毒入り餃子事件によって、多くの人々が中国産の食品を購買しないように気をつけ始めているようだ。必ずしも中国産のものが悪いとパニックする必用はないと思うが、KBCでは、昨年のメニュー改訂以降、原則的に中国産の食材は使用していない。

加工品についても、原料に中国産のものが使用されている場合は、他に代用がきかないという場合を除いて、他のメーカーに切り替えて来た。別に中国に対して個人的な怨恨は全くないし、中国系の友人もいる。中華料理は大好きだ。
しかし、食品の安全性という点では信頼できないという事実は残念ながら否定できない。

しかしはからずも今回の事件で露呈したのは、中国産の食品を抜きに日本の台所は成り立たないという、なんとも恐ろしい現実である。それもそのはず、日本の食料自給率は38%まで落ち込み、東京にいたっては1%だ。
日本の農業政策は本当になんとかしないと日本が饑餓国家となってしまう。
そのためには、国内産の農産物の需要が高まらなければいけない。

KBCは、非力ながらも、国内産の食材を可能な限り使用するということによって、農産物の内需拡大の一端を担いたいと思っている。
しかしそれは常にコストとの戦いだ。国内産原料のみを使用して、国内で製造されているものは確実に高い。
いかに安く仕入れるか。これが商売の鉄則だ。
しかし食品に関して言えば「安かろう、悪かろう」である。ゆえに、仕入れ値が高くなっても、良いものを入れるというコスト度外視の姿勢を貫く覚悟がないかぎり、安全は提供できないのだ。利益が上がらなければ、ビジネスを継続することもできないわけだが、しかしそのために食の安全を無視することはモラルに劣る。

安全とコスト、その狭間で揺れる気持は経営者なら誰でも理解できる。
しかし我々KBCは、コストよりも安全を選ぶことを誇りにしていきたいと思っている。


そんな我々の熱意を影で支えてくれている人がいる。
それは隠れたKBCの功労者でありパテシエである。その名はクミママ。

彼女が、KBCの人気ナンバーワンデザート「シフォンケーキ」を焼いている。
実はクミママとは通称で義母である。
KBCをよく知る人々から「クミママ」と呼ばれ親しまれているのだ。
彼女は無給のパテシエであり、無報酬の社員である。身内だということもあって誰よりも我々を応援してくれている。5年前に他界した夫は経営者だった。経営者の妻という立場で生きた女性だから、経営者の妻となった娘の立場を誰よりも理解できるのかもしれない。

シフォンケーキはKBCの看板スイーツだ。本当に人気がある。シフォンケーキを買うために、わざわざ遠いところから来店してくれる人もいる。
このシフォンケーキの材料も、昨年から、国内産小麦に切り替えた。それだけでなく、卵も通常のものではなく有精卵にした。KBCのスイーツでは、甘味にグラニュー糖は使用していない。
シフォンケーキには「てんさい糖」を使用している。材料をより良い高価なものに切り替えたことで、当然原価は上がったわけだが、売価はそれ以前からの据え置きで提供させていただいている。
それができるのも、クミママのサポートのお陰なのだ。
そんな影の功労者への励ましのメッセージが寄せられた。これは、あるインターネッッの掲示板に書き込まれていたものだ。


今日、とある場所で買い物をしていたら、視界の中に、こちらを向いて立ち止まっている人影があった。見るとそれはクミママだった。買い物かごを覗くと『有精卵』が4〜5パック入っていた。よく見ると『平飼い』の有精卵。新聞の折込に入っているような売り出し卵の値段では買えない、高価な卵。
KBCでも人気の高いケーキといえば、シフォンケーキ。
この材料がこの卵。そしてこのケーキをせっせとひたすら作り続けているのがクミママだ。
「これ、シフォンの材料ですか?・・・いつもありがとうございます」
そして、短時間の立ち話ではあったが、材料の話になった。小麦粉は国産小麦、油も一番絞りの質のいいオイル。卵は平飼い有精卵。
材料も質のよいものに切り替えていると聞いてはいたけど、自分の目で有精卵のパックを見たとき、聞いて知っていた情報はビジュアルとなって、はっきりとまぶたの裏に焼きついた。
世間ではどうしようもない食品業界のそそうが次々と明るみに出てきているけど、KBCはまじめに誠実に本当に体に優しいものを提供しているんだな。体に優しいことは、高価であることを伴っている場合が多いのに、同じ値段で提供し続けてくれている。その事実に思わず頭を下げたくなった。そして、来る日も来る日もシフォンケーキを材料の一部を負担しながら無償でつくり続けているクミママには頭が上がらない。シフォンケーキに含まれる労は、提供価格をはるかに超えている。そういうサービスを受けているんだなあ・・・。ここまでやってくれるのか!
思いやられていることを改めて思うのでありました。


KBCの現実を良く知る人の書き込みだが、こういう声が我々を奮起させる。
安全を提供するためには努力が必用だが、身内騒動で努力している姿を、見ていてくれる人は、見ていてくれるんだな。そう思えるからだ。
こういう声がスタッフにとっての安心の基だ。スタッフが安心していなければ、お客様に安心も安全も提供できる訳がない。先日、近所の農園から無農薬野菜がわんさか届いた。KBCのコンセプトに賛同してくれるお客様からのものだ。

成田の方から無農薬野菜が突然届いたこともあった。
現在提供している自然栽培玄米も、農家の方の好意で通常より安く仕入れさせていただいている。多くの方々の協力がなければ、食の安全は確保されない。

もっともっと、食に関わる者たちが協力しあい、日本の食を支えていかなければいけないと思う。我々としては、第二、第三のクミママが登場してくれることが最も嬉しいのだが・・(笑)


(2008年3月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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