専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2008年1月号の表紙

旭屋出版web site


バラエティカフェ(2008年1月号掲載)


「さあ、お待ちかねのコーナーです。レディース・アンド・ジェントルメン、今夜も登場いたします。皆様に元気を与えるそのために。きょうも体にむち打って、キックバックダンサーズの登場です!盛大な拍手をお願いします!!」

聴衆は一斉に入り口に目をやる。
ゆっくりと入り口の分厚い鉄製防音扉が開く。
するとそこから、フルメークと衣装に身を包んだ、キックバックダンサーズが勢いよく入場してくる。

このときを楽しみに待っているお客様は多い。
彼らがリズムに合わせて登場すると、会場からはドッと笑いがわき起こる。
学ランに禿げづら、あるいはチャイナドレスにアフロのづら、はたまた長嶋監督のように濃いひげ面の親父キャラ。まずは見かけで笑いをとらないと。

「いいぞ。うけてる!この快感がたまらない!」
うけをねらっているのに、うけないときほど辛いものはない。
「自分たちは、ただひたすらに『バカバカしいこと』をやって盛り上げて、笑いを提供するためにいるのだから、うけなかったら意味がない」。

その自覚が彼らを突き動かしている。けれども彼らはプロの芸人じゃない。素人が笑いをねらってこけたときほど、その場の空気が凍りつくものもない。だからそれなりに緊張しながら、彼らは毎週ステージに上がる。

体を張って、体当たりでお客様とガチンコ勝負。
キックバックカフェ(以下KBC)マネージャーと、厨房スタッフ、それに弊社で運営しているフリースクールの校長、そしてイベント要員の女性。
この四人には本当に頭が下がる。
有り難いことに、彼らは本当にバカバカしいことが好きだ。
よくここまで毎週真剣に取り組んでくれるものだと関心する

三年前のKBCオープンのときからずっとやり続けているこのイベント「サンデーナイトサービス」。
「明日からも頑張ろう」をテーマに、スタッフ一同がお客様に笑いを届けるために提供しているバラエティーショーだ。

精神免疫医的に見ても、笑いが免疫力を高めることはよく知られている。
末期ガンを宣告されたある男性が、仕事をやめ、好きなことだけをやろうと、かねてから泊まりたいと思っていたホテルで生活し、毎日好きなお笑い系のDVDを観ながら過ごした。すると、彼のガンはすっかり治ってしまった。

こういうことは実際に起こる。だから人生に笑いは欠かせない。
キックバックとはリラックスしようという意味だ。しかし、人びとが心底リラックスするためには、緊張から解き放たれる必要がある。
言うまでもなく、笑いこそが緊張をほぐしてくれる最高の処方箋だ。

そういうわけで、KBCは店名に相応しい場所であるために、笑いを提供することも大切な仕事の一つだと認識している。

だから、KBCはサンデーナイトサービスをやっている。
午後6時にオープンし、7時頃からステージが始まる。
笑いだけじゃない。真面目に音楽もやる。往年のフォークシンガーが歌ったり、オペラユニットも出演する。僕たち夫婦が中心になっているアカペラユニット「仙川タクシー」も歌う。

大好評のコーナーの一つは「じゃんけん兄さん」だ。
冬はぴちぴちのトナカイ、夏はカエル、またあるときは、ヒーローものの衣装に身を包んだ「じゃんけん兄さん」が登場し、お客さんとじゃんけん勝負。 
勝ち残った勝者は、ケーキやデザートをゲットできる。

じゃんけん兄さん、数ヶ月後には結婚を控えている30過ぎた教育者だが、根っからの関西人で、馬鹿らしいことが大好きときている。
仙川ではちょっとした顔になってきた。
街を歩いていると「あ、じゃんけん兄さんだ!」と指を指されるというのだから。
 


そして、この夜の目玉のコーナーが、KBCの箱バンド「天国民」の演奏の最後に登場するキックバックダンサーズなのだ。
彼らは毎週ネタを仕込んで、その夜のためのキャラクターに変身する。

この一番大切なネタ仕込み、何を隠そう我が妻、久美子がやっている。
彼女もまた笑いが大好きだ。ロスでエンターテイメント業界にいたから、スステージのなんたるかも心得ている。
メークや衣装、そして動きの指示まで細かいチェックに余念がない。
といっても、我々夫婦も、スタッフも毎日仕事に追われているから、当日の本番前ぎりぎりになっての仕込みだ。短い時間で打ち合わせをして、ダンサーズは凄まじい集中力で振り付けを確認する。

本番直前、ずらと衣装にフルメークで、店先でリハをしている4人組が、通行人から目撃されている。行き交う車は最徐行だ。どこからみて怪しい。
 
最近のヒットは、ビリーズ・ブートキャンプならぬ、ゴリーズ・ブータキャンプ。
ゴリラキャラのゴリーが、ブタのような体格になるためのエクササイズを伝授するという、なんともあほらしい企画だが、このゴリー隊長の姿は、一度目に焼き付いたら、忘れられないほど強烈だ。
黒人メイクで、つるつる頭の彼が、海坊主のような風貌で初登場したときの、お客さんの反応は「バカ受け」という感じだった。

一方、ローズマリーという外国人キャラになりきっているのは、KBCのホールスタッフとしてヘルプに入る日頃はOLをしている女性だ。彼女、きっともともとコスプレが好きなのかもしれない。現実離れしたキャラになりきって演じることに喜びを感じ、こんなことをやってもギャラは出ないのに、毎週喜んで変人、いや、別人になりきっている。真夏には「おいわさん」を演じて子供たちを本気で怖がらせた。

先日、ヘルプの若い男性が自転車でKBCに向う途中、巡回中のお巡りさんに呼び止められた。

「どこにいくんだ?」

「あの、キックバックカフェというところで働いてるんです」

するとお巡りさんは言ったそうだ。

「あ、日曜の夜に踊ってる店だな・・あそこで働いているのか・・じゃあ」

職務質問はそれで終わった。
そうか、地元のお巡りさんにも、認めてもらっているんだな。

「明日からまた仕事か」
そんな憂鬱な風を吹きとばすために、日曜日の夜、KBCは人々の熱気で暑くなる。今週もまたやりますよ。あなたの笑顔がみたいから・・・。

(2008年1月号掲載)

このページのトップに戻る


■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



「心の交差店」TOPへ戻る

ホームに戻る