専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2007年12月号の表紙

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奮い立つカフェ(2007年12月号掲載)


トモ子は30代後半の主婦。
トモ子にとって、キックバックカフェ(以下KBC)は大切な場所だ。
なぜって、ここで最愛の夫と出会ったのだから。

20代であせって結婚したけれども、結局うまくいかず離婚。
果たして、もう一度春はくるのだろうか? そんな不安と戦いながら30代の後半にさしかかったとき、運命の出会いがやってきた。

この場所こそKBCだった。
夫は僕がやった某社の労働組合主催のセミナーに参加していた一人。僕の本の読者だった。セミナーがきっかけでKBCに足を運ぶようになり、恋に落ちたのだ。

二人は、仙川にオープンして間もない頃の、KBCで結婚式を挙げた。
そして、新居もKBCの近くに購入した。文字通り、彼らの人生には、KBCが深く関わっている。最近、待望の女の子を授かったばかり。
以前は未来の夫と、ちょくちょくカフェに顔を出していた。
しかし今は、目の中に入れても痛くない我が子を連れて、よくKBCにやってくる。

子どもを生む前のトモ子には、
『子どもと二人きりで家にいると煮詰まってしょうがない』
というママたちの言葉がぜんぜん理解できなかったという。
自分に限ってはそんなことはないだろうと思っていたのだ。

ところが今では、自分がその通りになっているのを自覚している。
再婚もできて、娘まで授かり、母親として最高の幸せを満喫している。

それでも煮詰まってしまう。
やるころは山ほどあるから、煮詰まっている時間なんてないだろう、と思っていたのに、やるころがあるからこそ煮詰まってしまう。

「泣く前にこれをやらなきゃ」とか「機嫌のいいうちにこれを片付けよう」と気持ちばかりが焦り、やる前に疲れてしまう。
だから、やる気そのものが起こらない、なんていうことも多い。

こうなってくると、悪循環だ。
「だから、ママ友達は、子育て支援セミナーに行ったり、児童館へ行ったりして煮詰まりを解消しているんだな・・・じゃあ、私も行ってみようかな・・」

ところが、「よし、今日こそは、私も行ってみよう」と一大決心をして家を出ても、気づいてみると、足はKBCに向かってしまう。
そうは言っても、毎日通うには、お財布と相談しなければ、なかなか厳しいのが現実だ。
それでも足が向く。
その代わりに水一杯で、長居をすることもしばしば。

「注文しなくても文句を言われないカフェなんて、ここくらいのもんでしょ〜」
確かにKBCはそういう場所だ。注文しない方もお客様として歓迎する。

事実、毎朝朝の8時過ぎ、まだスタッフが準備を始めたばかりの時間に、注文をしないお客様が毎日やってくる。

「おはよー」と威勢よく入って来たかと思うと、
「いってきまーす」と言って店を出る。
その間、わずか10秒。何も食べないし、何も飲まない。
座ることもない。
「おはよー」と「いってきまーす」だけ言いにくる。

スタッフと話しをしたり、カフェの雰囲気を楽しんで、余韻に浸るという暇もない。
それでも、その人は毎日やってくる。
たったの10秒だけれども、KBCに顔を出すことで、エネルギーを充電しているようだ。
その人にとってのKBCはピットではない。
急いで出ていかなくてもいい。ゆっくり時間をかけて、その場を満喫する。
けれども、ここで彼女はエネルギーを充電して、リフレッシュされるのだ。その意味においては、ピットと同じだ。

「働いているスタッフを見ているだけで、クリエイティブな気持ちになり、煮詰まっている状態からすっかり開放されますね。KBCを出るころには「よーし!」という思いが全身にみなぎるんですよ」というのだから。

「あー、あれは明日でいいや、後回しにしよう」
そんな風に、錆付いてしまっていた心が一新されて、
「さあ、帰ったらまずあれを片付けてこれやって・・おー、わくわくしてきたぞ」
そんな気持ちになるという。



ある日、とも子は、産後久しぶりに迎えたPMS対策でKBCへ向かった。
(PMS=月経前症候群。ホルモンバランスの影響で精神的に落ち込みやすくなったりイライラしたりする状態で、一般的に生理の一週間前頃から、生理後2〜3日まで続く)

久しく味わっていなかったどよーんとした気分。

「そうだっ!『男と女の心理学セミナー(KBCで定期的に開催)』でも教えてもらったように、PMSを楽しもう!」

彼女は、セミナーで教わったとおり、自分の気持ちがPMSの影響で沈んでいるのを発見したときの対処法を実践した。
それは、「今はPMSだから、これもやっちゃえ!」と、PMSを逆手にとって、自分にご褒美をあげることで、PMSの時期を楽しむ、という方法だ。

彼女は自分にこう言った。

「今日は、PMSだから、KBCで、お金のことも気にしないで、
いつもは控えているデザートまで食べちゃえ!」

そして、ビーガンチョコケーキとラテのセットを思いきって頼んだ。

「あー、うれしいな〜。体に優しいビーガンスウィーツ。
乳製品を使っていないだけじゃなくて、白砂糖も使ってないんだから・・・
健康志向の私には最高。それに美味しいコーヒー。ほっとできる〜」

自分へのご褒美だと決めていたから、余計に美味しく感じられる。
そしたら、どんよりムードは吹き飛んで、心はすっかり快晴になった。

「次のPMSもまた来なくっちゃ!」

彼女は言う。
「KBCの空気と、働くスタッフの姿。これによって煮詰まった気持ちが奮い立たされるんです」

今日も、KBCで、誰かがエネルギーを充電して、奮い立っているかもしれない。

そう思うと、スタッフ一同、奮い立たされるのだ。


(2007年12月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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