専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2007年8月号の表紙

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ヘルシーカフェ (2007年8月号掲載)


6月の中旬、メニューを一新した。
そのお知らせをメルマガでお客様に配信したが、すぐにこんなレスポンスをいただいた。


メニュー一新のメルマガ読みました。
キックバックは、子連れも歓迎、禁酒禁煙・・・当然食も安全・・なイメージがあったにもかかわらず、実際メニューを見てみると、子どもに食べさせるモノがない・・・と「食事内容」がどうしてもひっかかって足が遠のいてました・・・
今回のメニュー一新は本当にうれいです!ありがとうございます。
お友達にもオーガニック&ヴィーガンになったとガンガン宣伝します!
これからも、真のリラックス・・ひいては安全な食・・・期待しています!
大変だとは思いますが、応援しています!ありがとうございます。


お分かりのように、今回のメニューで一番大きなことは、オーガニックやヴィーガンメニューを始めたことだ。
子どものメニューもあったし、メニューのセレクションそのものは、ファミレス並みに多い。
けれども、食の安全にこだわる人たちや、アレルギーなどの理由で乳製品を摂れない子の母親たちから見れば「食べさせるものがない」ということだったんだということに改めて気づかされた。

今までも、米は栃木の農家から直接取り寄せていたし、基本調味料のいくつかは天然のものであったから、それなりに食材にこだわって安全な食事を提供してきたつもりではいた。
けれども、俗にいわれるホールフードレストランとして認識されていたわけではなかったし、我々自身、KBCがナチュラルフードを提供しているという徹底した意識は持っていなかった。

オーガニック食材の安定した仕入れの難しさや、コストなどを考えると、この方向へのシフトはリスクの伴う決断だった。
コストが上がれば売価も上がらざるを得ない。しかし、ここは代官山や青山じゃない。仙川という場所では、人々はまだまだ安全よりも安価を好む。

果たしてオーガニックやヴィーガンが受け入れられるのだろうか?
そういう不安もあった。しかし冒頭のメールのように、新しいKBCの登場を心待ちにしていたくれた人がいた。そしてこれは、我々KBCの本来あるべき姿だったと今さらながらに思う。

もともと、KBCはノンスモーキング、ノンアルコールのカフェとしてスタートした。
それは、ここがカフェであるという以外に、カウンセリングの場でもあり、人びとが重荷を下ろし、癒しを求めて来る場所だからだ。つまり安心と安全を提供する場なのだ。(本誌2007年3月号を参照)

それにも関わらず、ここで提供される食事が安全と安心を第一に考えられていないとしたら、それはKBCの存在意義と矛盾する。

妻は、もともとフィットネ・スインストラクターだったし、アメリカの大学で生理学や栄養学を専門的に学んだ女性だから、食事について非常に気をつけてくれていたし、栄養のバランスと健康を考えた料理を作ってくれていた。だから妻にとっては、今回のメニュー一新は僕以上に当然のことだったかもしれない。

実は、僕は昨年の末から体調を崩し、自分自身の健康管理と食事について、思うところがあった。常々妻から注意を受けていたことをただ実行するだけのことでよかったのだが、外食では肉食を極力おさえ、野菜や穀物を中心にする食事に切り替えた。するとどうだろう。それは速やかに体調にいい結果として現れた。この体験は今回のメニュー一新の布石となった。

僕たち夫婦はちょくちょく渡米し、ロスで音楽制作をするのだが、その関係で知り合う人たち、特にセレブと呼ばれる人たちの中に、自分たちが口にするものには徹底的なこだわりを持っている人が多い。

その中の一人に世界的に有名なシーラ・Eというドラマーがいる。1985年にプリンスがプロデュースしたグラマラス・ライフという曲が大ヒットしたから、シンガーとしても有名だ。彼女も彼女のマネージャーも食べ物には強いこだわりを持っている。オーガニックや無添加というだけでなく、グルテンも摂らないなど、自分のコンディションと食物との相関関係をよく理解している。

ある日彼女が「リンゴはもっと凄いわよ」と言った。リンゴとは元ビートルズのリンゴ・スターだ。彼女はつい最近までリンゴ・スターのツアーに参加していた。彼女曰く、彼は添加物を一切口にしないという。摂取する水に至るまで、徹底的に自己管理しているというのだ。

僕たち夫婦はセレブでもなんでもないが、彼らとの交流の中で、食を提供するカフェオーナーとしての更なる高い意識と自覚を呼びさまされたことも、今回の決断と無関係ではない。




4月にパテシエを含め数名のスタッフを連れて渡米した。
僕たち夫婦がロスで滞在するエリアに、お気に入りのオーガニックカフェがあり、そこに妻が大好きなヴィーガンデザートがある。それを食べさせるのが目的だった。

ヴィーガンとは完全穀菜食主義のことで、動物由来の食材を一切口にしないライフスタイルのことを言う。
ヴィーガン先進国のアメリカには、バターも卵もミルクも使わないケーキなどが豊富だ。

しかし日本では、自然食というと「美味しくない」「質素」というイメージがつきまとい、お洒落な感覚とはほど遠い。
それにヴィーガンという言葉自体が一般化していないから、カフェで提供できるような美味しいビーガンスイーツにはなかなかお目にかかれない。

うちのパテシエの頭の中にはヴィーガンいう言葉さえ存在していなかった。彼女はバターや乳製品を使わない御菓子ができるとも思っていなかった。そんな彼女にロスで何種類も試食させた。
彼女は実際にそれが「できるんだ」ということを肌で感じ、世界が変わったと言う。そして6月から売り出したビーガン・マフィンと、ビーガンチョコレートケーキは、連日売り切れになるほどの人気メニューになった。

まだまだ、ヴィーガンもオーガニックもメニューの一部でしかない。
しかし、6月のメニュー一新以来、「私、ヴィーガンなんです」というお客様や、「体にいいものができたんでしょ!なんだか知らないけどそれを食べにきたわよ」という方々が増えてきた。こんな嬉しい感想もいただいた。


「砂糖、卵などを使わないで作ったマフィンとは一体どんなものか?
動物性のものを避け、甘みも天然のものを使っているんだったかな?
今まではデザートは乳製品や砂糖が入っているものが多かったので、食べたくても乳腺症のために我慢していたが、このマフィンなら安心して食べられる。
待望のデザートだ。感想はひとことでいうと「頂けましてありがとう」です。
なんてゆーのかな、一口一口かみ締めるたびに、感謝したくなる感じ?ああ、食べものって本来こういうものなんだなって思った。」


食の安全が脅かされる時代だからこそ、飲食業に携わる者は、食の安全を確保する責任と、それをしているという自覚が求められるのだろうと思う。
特にKBCは、その特質上、普通以上にそうでなければならないと思っている。
遅すぎた第一歩だと思う。

しかし自信を持って「安全です」と言えるものを、いかに安価で美味しく提供していくか・・・

この新しい戦いに誇りをかけてチャレンジしていきたい。

(2007年8月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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