専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店
2007年6月号の表紙

旭屋出版web site


思い出カフェ (2007年6月号掲載)


あなたにとって、思い出の場所はどこだろうか?

ある人にとっては学校だろうし、ある人にとって、それは初めてのデートスポットだったりするのだろう。それがどこであれ、いつまでも色あせずに記憶に残る思い出の場所があるというのは、それだけで人生に潤いを与えてくれるものだ。

では、思い出のカフェというのはあるだろうか?
キックバックカフェ(以下KBC)のオーナーとして、自らが経営するカフェが人々にとって思い出の場所、思い出カフェになっていることを知るとき、心の中に暖かいものが溢れるのを感じる。

ある日秘書から電話が入りこう言う。
「カウンセリングを受けて、すでに結婚している佐藤さんカップルが、カフェにいらしてます。二人の原点に戻りたくて来たということです」

僕は出先から戻る車中にいた。 けれども、二人がわざわざ食事をしに来てくれているということを知り、少しの時間でも会って話したいと思い、時間があれば待っていてくれるように頼んだ。

「元気にしてた?すごく久しぶりだね」

「はい、もう結婚して三年経ちました」

「早いね。で、うまくいってるの?」

すると二人が言う。

「実は、喧嘩がたえなくて、あまりにもひどくなって、二人がカウンセリングを受けたこの場所に来て、原点を思い出そうっていうことになって・・それで今日ディナーにきたんです」

二人の話しを聞くと、確かにいろいろすれ違いが多い。けれども、KBCに来ることで、スタートした原点を思い出せるのではないかと足を運んでくれた。この後、また二人はカウンセリングの予約をいれてくれた。
うまくいってるときに来てくれるのも嬉しい。けれども、関係がぎくしゃくしているときにあえて来ることを選んでもらえるというのは、もっとうれしいものだ。


つい先頃、4月の終わりに、2003年に結婚した中村さん夫妻が来てくれた。 僕は渡米中だったので会うことができなかったのだが、帰国した僕にこんな嬉しいメッセージを残してくれていた。

「今年の1月22日に男の子が生まれました。昨日が結婚記念日だったので、お祝いと報告をかねて遊びに来ました。
子供を連れてキックバックカフェに来ることができ、とても嬉しく思っています。
マリッジブルーになり、カウンセリングに来た頃がなつかしいです。マザーズルーム使いました。子連れでも来れるのでとっても助かります。また遊びに来ます。
中村伸彦・美樹」

結婚記念日と出産のお祝いにわざわざKBCに来てくれたんだ・・なんと嬉しいことだろう。

この二人が最初に来たときのことをまだよく覚えている。
確かに彼女は、彼の行動に不安を覚えて思いっきりマリッジブルーになっていた。 カウンセリングの中で、何度も涙を流していたっけ・・・。
あのとき、二人がKBCに来ていなければ、もしかしたら今の二人はなかったのかの知れないなと思うと感慨深いものがある。

数日後には、福島からわざわざ、湊さん夫婦が来てくれた。
はやり渡米中だったので会うことはできなかったのだが、二年目の結婚記記念日に合わせて、旅行をかねて上京し、わざわざ記念日の当日に来てくれたというのだ。


僕も結婚記念日には、妻と二人で大切な思い出の一ページを刻むために、毎年どこかのレストランを予約する。 今年もインターネットでいろいろ調べて、都内のあるレストランで食事をした。

けれども、到着した早々に、その場所が期待していたものとは違うことが分かってしまって、かなりがっかりした。それが普通の日ではなかっただけに、がっかりどころか怒りさえわいて来た(笑)。

誰が悪いというのでもないけれども、せっかくの記念日に期待はずれの場所に来てしまった事実に対する怒りみたいなものだろうか。僕自身の中に、結婚記念日を大切にする思いがあるだけに、その日を選んでわざわざ地方から来てくれるということの重さを感じることができる。

しかし彼らにとって、KBCは、期待はずれのリスクを背負い、ドキドキしながら来る場所ではない。
二人にとって大切な場所としてすでに認識されているからこそ、特別な日に選んで来てくれたのだから。
彼らにとって、KBCは思い出かフフェなんだな。

そう思うと心の底から喜びがこみ上げて来る。
 


結婚には関係ないけれども、一人の女性の心にしっかりと思い出カフェとして定着していたことを教えてくれる、こんな嬉しいバリスタのレポートもある。

「ありがとう」もうれしいし、「また来ます」もうれしい。
「おいしかった」「たのしかった」はもっとうれしいけど、 さびしくて嬉しいのが「最後に来れてよかったです」。

ライブ前の夕刻に入ってきた常連さんの様子が変です。
仙川のパスタ屋でアルバイトして、ホテル業界への就職を目指していた大学生Mちゃん。ゴスペルフェスタ(毎月開催のイベント)にも来たことがあります。

「就職決まったの?」 と聞いたら「実はもうすぐ引越すんです」と。

「えぇ? どこに?」

「オーストラリアに!」

「!!!」

ワーキングホリデーのようなプログラムで、現地のホテルで働いてみたいんだという仰天計画でした。

「だから、最後に来れてよかった!」

この言葉がなんと嬉しかったことか。
お別れのさびしさはあるけど、彼女の中にKBCが、大切な場所として根付いてる確かな証拠であり、こういうお客さんが増えていくことを僕たちは強く願っていたから。


僕はバリスタと彼女が話しているのを知っていた。
彼女は友達をわいわい騒ぐために来たのではない。たった一人で、長い間物思いにふけるように座っていた。
その様子からも、彼女はKBCでの一人の時間をしっかりと記憶に刻んでいたのだと思う。引っ越す前に、もう一度行っておこうと思う場所。それは確かに、大切な場所であり、思い出の場所であるはずだ。

KBCは、彼女にとっても特別な場所、思い出カフェになっていたのだな・・・。

僕たちは今日も願っている。
一人でも多くの人にとって、KBCが思いでカフェとなれることを。


(2007年6月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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