専門誌 月間カフェ&レストランにて オーナーマレが2年間連載(2008年8月終了)

カウンター椅子
心の交差店

2006年8月号の表紙

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クリエーターズカフェ (2006年8月号掲載)


「今年はキックバックさんに企画段階からかかわって欲しいんですよ。キックバックさんのノウハウや、企画力、それにマンパワーが必要なんです」

今年20周年の節目を迎える仙川の夏の風物詩「おらほせんがわ夏祭り」。
毎年8月1日〜3日までの三日間、商店街の野外駐車場を特設メイン会場に、連日2万人を動員する一大イベント。
その祭りに今年は企画段階から関わってほしいとの依頼だ。
「今までのものとは違うものをぜひ作り上げたい。そこでキックバックさんの力をぜひお貸しいただきたい」というのだ。
「よろこんで。ただ『楽しかったね』で終わりのイベントじゃなくて、来た人の心にいつまでも残るイベントにしましょうよ。一緒に仙川をもりあげましょう!」

自分の父親ほども年の離れた商店街の理事の方々を相手に、マネージャーは熱弁をふるった。そして、おらほ仙川夏祭り20周年特別企画としてキックバックカフェトータルプロデュースの『仙川ミュージックフェスタ』の開催が決まった。
オルケスタ・デ・ラ・ルスや、プリズムなどの一流プロミュージシャンに加えて、ロスからは、クライストサイド・ソルジャズというラップグループを招待する。そして地元のダンスチームや、音大生の演奏に加え、僕たちのバンドも出演させていただく。理事会はこのイベントのために特別予算枠をとってくださり、その用途に関しても全面的に委ねてくださった。
こんな名誉なことはない。
 
僕はこの街で生まれた。仙川は有名音楽大学もある「音楽の街」。そこには文化がある。商店街の定食屋さんで、音大生が譜面を片手に声を出して歌っていても、だれもとがめない。それは普通の日常だ。
僕はこの文化の香りが大好きだ。
KBCを通して、仙川の街づくりの一躍を担えるというのは、なんと嬉しいことだろう。これこそ僕たちが仙川に来たときの願いだったのだから。

この仙川にKBCをオープンして、早いもので1年半が過ぎ去った。 
オープン当初、僕たちのもっぱらの願いは、KBCが仙川に受入れられることだった。ノンアルコール、ノンスモーキングということもあって、人々がどのように受け入れてくれるのか、全く未知数だった。
なぜライブハウスなのに、ノンスモーキングなのかとか、アルコールがないのはなぜかと多くの問い合わせも頂いた。来店した後に、アルコールがないのを知り、去っていく人々もいた。

そこには、僕たち夫婦がカウンセラーをしていて、KBCはカフェであって、実はカウンセリングの場であることや、サポート校としての教育現場であることなど、いちいち説明しないと理解してもらえない理由がある。
また、僕には牧師という肩書きもあるために、変な宗教をやってる怪しい人々なんじゃないかと言う不名誉な噂にも、常に対応しなければならない。
スタッフはみな自覚を持ち、一見わかりにくいこの店のコンセプトを、丁寧に説明し続けた。
地域社会の人々に必ず理解してもらえると信じ続けて、ひたすら毎日、複数体制でチラシを配り続けた。
駅前や通りに毎日立ち、ただ配るのではなく、友人を作るつもりで配るように心がけた。気軽に話しかけ、質問してくれた人たちには、精一杯の笑顔でコンセプトについて説明した。
雨の日も傘をさしながら、いつもと変わらずチラシを配る。
台風の日も出て行く。
駅から直線で400メートルとはいえ、駅の目の前という立地ではないことから、歩くのをおっくうがる人もいる。そういう人たちには、友人のように話しかけながら、店先まで案内した。商店街にも一軒一軒挨拶に回った。
毎日毎日、決まった時間に、同じ顔が臆することなく人々に話しかける姿を目撃するようになった近隣の方々は、じょじょに彼等の頑張りに好感を持つようになってくれた。


「君たち本当に偉いな、よくやってるよ」
「大丈夫、ここは味もいいし、きっとうまくいくよ」
少しずつ、そんな声をかけてもらえる回数が増えていった。
チラシ配り隊のリーダーの女性スタッフは、今となってはKBCの看板娘となっている。
タクシーの運転手さんや、スーパーの店員、駐車場の誘導員、近所のヤングままたち、みんなから顔を覚えられて、話しかけられる。
ケーキまで差し入れしてくれる人もいる。ときどき休むと「昨日いなかったじゃない。大丈夫?」などと気遣ってくれる。
 
スタッフたちは、地道な活動にある程度の手応えを感じ始めていた。
そんなとき、ちょうどオープンして10ヶ月目に入ったとろ、昨年のおらほせんがわ夏祭りに、キックバックのバンド「天国民」に出演依頼が来たのだ。
そればかりではない。同じ地元でも、仙川商店街とは、異なる味を出している仙川アベニューのオーナーさんから、「ぜひ第一回アベニューフェスタをやるのでキックバックさんに音楽イベントのすべてをプロデュースしてほしい」という依頼を受けた。

アベニューはその一角全体の地主さんが特別に思い入れを注いでクリエイトしているアート地区だ。美術館などもある。世界的に有名な安藤忠雄デザインの建物が立ち並び、建物の景観もすべて統一されている。昨年、僕たちはそこでの小規模フェスタをプロデュースさせて頂いたのだ。
そんな昨年の夏、スタッフとは、オープン一年目で、地元の人々に受け入れてもらえたことが、何よりも嬉しいと喜びを分かち合った。
今年、アベニューフェスタは二回目を迎え9月後半に開催される。キックバックは昨年同様イベントのトータルプロデュースを行なう。
そして、冒頭でも言ったように、8月、KBCはおらほ仙川夏祭りの特別企画をプロデュースさせて頂くこととなった。

僕たちはKBCを複合的価値創造空間と呼んでいる。そし僕たちは、新しい文化を創造するクリエーターズであると自負している。
そして今、僕たちが提供しうるものが、地域社会に必要とされている。これを自覚できるより大きな喜びがあるだろうか。
 
人と人の心をつなぐのは信頼という帯だ。
その帯が結び合わされることを信じて、地道に一つ一つのことをやり続けるとき、そこに大きな力が生まれることを僕たちは体験を通して学んでいる。
この原稿が掲載される頃、僕たちは通常のカフェ業務以外に、イベントプロデュースの準備で大忙しだろう。

(2006年8月号掲載)

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■バックナンバー

2008年----------

8月号 町づくりカフェ
7月号 好意がカギだ
6月号 奇跡カフェ
5月号 私の学校KBC
4月号 医療関係者の癒しカフェ
3月号 安全カフェ
2月号 キッズバックカフェ
1月号 バラエティカフェ



2007年----------

12月号 奮い立つカフェ
11月号 大切すぎて入れないカフェ
10月号 おかえりカフェ
9月号 天国の前庭
8月号 ヘルシーカフェ
7月号 再生カフェ
6月号

思い出かふぇ

5月号 かけこみカフェ
4月号 マイホームカフェ
3月号 ノンアルコールカフェ
2月号 元気がでるカフェ
1月号 ゴスペルカフェ

2006年----------

12月号 人儲けカフェ
11月号 キックバックはめぐみカフェ
10月号 キックバックは変身カフェ
9月号 キックバックは出会いカフェ
8月号 クリエーターズカフェ
7月号 ママも子どももキックバック
6月号 キックバックは
閉店後も大歓迎
(連載スタート)



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